アブラムシ | struo-break
アブラムシに興味がある。それは"単為生殖"という方法で繁殖していく生物だからだ。つまり、相手を必要とせず、自分だけで自分の遺伝子情報を無数に複製していくという生態を持つ。増えた個体は"クローン"。驚くべきことに、状況に応じて有性生殖の方法を取ることもあるという。すなわち生殖システムの柔軟性を兼ね備えている。
この生物の生態を追いかけていくと独自の生存戦略を持っている。"相利共生"の名のもとに、自ら生成した糖液をアリに与える事によって、天敵であるテントウムシから捕食されることを免れている。
自分と対比的な存在を知るほど、人間はなんて非合理な特性を備えた生き物なのかと思ったりするが、組織論と重ね合わせてみて、"変化に適応しやすくするため"と言われると、妙に納得できる。
最近アナロジーを駆使してAIに自由に相談できることに気が付いた。
つまり生物から何かを学ぼうとすることなのだが、昔からこの"生物模倣技術"には関心があった。「類似性」の中では直感的に分かりやすいテーマ。虫や植物を見習って最先端の技術に応用しようとする世界と言えよう。前提となるのは、虫や植物はすでに人間が知らないものを持っているし相互にやっているという考え方。当時「生き物たちの建築」の様な題材から追いかけはじめたが、肝心なのはその分野的な拡がり方ではなく、考え方の汎用性を高めること。すなわち"骨だけを抜き取る"事だった。
生物模倣技術に限って言えば、デザイン領域なのかどうかも定かではないし、直接的に使える情報でもない。ただ、この領域に関心を抱き、世間的にあまり注目されていない本を見つけては、"類似性"というキーワードの万能さを確かめていった。本川達雄氏の「ゾウの時間 ネズミの時間」も明らかに名著だったし、赤池学氏の「生物に学ぶイノーベーション」はマジでおすすめ。古典で言えば「ファーブル昆虫記」もそう。文庫本カバーや新書本カバーと共に勧めたい。
私は生物を人間が模倣するという事実に引き付けられていたし、それがなぜ確信をもって行われるのか、なぜ人がそれを面白いと思うのか知りたかった。ナノテクノロジーを活用して医療や素材、ロボットや宇宙等あらゆる分野に応用される生物模倣技術。私自身の属性を棚卸していくと、そのあたりへの関心は人一倍強い。