次元の裂け目を強調する | Struo-break
ボルヘスの短編小説はちょっとした神話の創造だった。神話的なモノは何も壮大な国家創世神話とは限らない。至るところに存在するし、誰でも創出できる。目の黒いおばあちゃんが病院の先生にごり押しされる薬を拒否してきたってことを聴く時にだってその契機はある。とにかく、テクノジーの進化に後押しされるように、分かりやすく万人が神話を編むことが可能となった。ボルヘスは学生時代にとある未来屋の主人が教えてくれた作家。以前はのめり込めなかった章を読み返す。偶然に遭遇した知人との会話から何かの記憶を辿ってみたぐらいの軽い入り。ラフな設定で、おまけに南米アルゼンチンの特有の空気や人の名前でもあるし、入り込みづらい要素満載だなと思いつつ、巧みに次元の裂け目を見つけ、その裂け目から"世界"を拡張し強調して最後には歓喜や戦慄に持っていく様な手法を感じ取る。これは"フォーカス"そのもの。たとえば、"爪"というタイトルだけで詩を書くあたり、かまいたちとか芸人の姿が脳裏をよぎる。以前は全く読めてなかったんだなという事に気付く。