識別可能な最小領域 | struo-stationery
80年代に書かれた恩師の著書に興味深い一説がある。風化した情報かもしれない。当時から時間の自動巻取り装置はずっと作動していたのだろう。"何もかも早すぎる"という現在の状況に酷似しているし、それに対する処方箋もシンクロする。「識別可能な最小領域(ミニマム・スレッショールド)を見つめ続け、巧みに仕組んで知のエンハンス(興奮)を起こせ」みたいな主張。言い回しはともかく記述された時期からして先見の明がある様に思う。自身は特化しない事に特化していたデザインコンサルタント。だけど、矛盾する様に卒業してからしきりに特化しろと言っていた。その事が頭にこびりついていて、特化を体現するまでに自分には年月が必要だった。たとえば古典的なポジショニング戦略を読んだからって明日からポジションを取れるという事はないわけで、ニーズのある領域で自在に操れるソースを持ちながら他社に真似できないような事を行うというのは、ほとんどアートの様な気がしてくる。要するにニッチな領域に特化してブランド化し、感動を呼び起こせという様なことだろう。たとえば中華料理としての拉麺が進化して日本で独自のラーメン文化が形成されている様に、先行事例は無数にある。整数の間に小数点以下の世界が無限に拡がるというのも似ている。