書体選び=共鳴の方法 | Struo-break

名入れの書体にこだわる方が増えて、企画して良かったと思う反面、こんなにニーズがあったのなら、レーザーを手にした時から細分化を行えば良かったなと思う面もあります。ですが、書体への意識の高まりが数年前も同じようにあったかどうかは定かではありません。そこで、改めて書体を選ぶ意味について考えてみました。
特に"名入れ"という局面で書体を選ぶには、それなりの心得がある様に感じます。自分自身が纏うわけですから。実は、曖昧で複雑な事象に遭遇した時に接する人の態度、すなわち"世界認識"と変わらないのではないかという見立てがあり、その過程は"共鳴する方法"なのではないかと考えました。基本的に対象について、何を知りたがり、選ぶという行為の間に何を思うかという内省を元にしています。

  • 発生(Genesis):根源にある原初的骨格・祈り

    対象の本質や根底にある"思想(意図)"を感じ取る段階。書体で言えば文字の「骨格」ですが、世界を捉える上では「対象の"原初的な構造"を捉えること」に該当します。

  • 文脈(Context):背負ってきた歴史や情報の構造

    その要素がどのような歴史や構造(背景)の中に置かれているかを解釈する段階。対象を単体(点)ではなく、周囲との関係性や蓄積した歴史(流れ)の中で認識します。

  • 再翻訳(Re-translation):現代の眼差しによる批評的解釈

    捉えた現象や情報をそのまま受け入れるのではなく、自分自身の現代的な視線や思想を通して、批評的に読み替えるプロセスです。理解するだけでなく、自分の持つ記憶にマッピングし、意味付けするという認知的な行為を表します。

  • 受肉(Incarnation):物理世界への実体化・相転移

    思考や解釈といった抽象的な認識を、具体的かつ精密に現実世界へ定着させる工程。認識した世界を外界へと還元し、表現する行為にあたります。

  • 境界膜(Membrane):自分と世界の間で、共鳴・共振を起こす場

    表現されたものが外界(他者や環境)と接し、共鳴や対話を生み出す場を形成します。自分と世界の境界において、循環的な関係性が生まれることを意味します。

「書体を選ぶ」という行為は、一見すると既存のモノから適したものを選ぶだけの様に思えます。しかし、本質的には、文字の背景にある思想や文脈(世界)を洞察し、それを自らの文脈へと接続したうえで、イメージや論理を結び付け、他者と響き合わせるという創造的なプロセスです。
したがって、書体選定は、人間が世界をいかに観察し、意味を解釈し、自らの表現として世界と関係を結ぶかという「世界を捉える行為」の能動的なフレームワークとして成立しています。