13年後の革選び | struo-stationery
革の理想など、データがないところでわかるはずもない。10年以上、STRUOで色んな革を仕入れてサンプルも収集してきた。マーケティングして、商品作りを試行錯誤して来ているから、視点も変わってる。
13年前、確かに革を選んだ。その時の情況もあった。革で作風やスキルまで気付かない内に変わっていったと思う。良くも悪くも厚革から始めて、遅くまで捨てきれなかった。
間違いなく難しい事をやりたがっていたし、大作志向だった。マーケティング意識が乏しかった。その思考に釣られて、無意識かつ現実的に皮革が決まっていった。コレクションを増やすと同時にスキルアップを課していた事も皮革選びに欠かせない要因だった。ニーズと合致したという意味での一つの到達点として、COD-3というレッグバッグの品番があり、個人レベルで濃密な商品群を抱えているという意味において、STRUOの様な存在は他にいない。
人に聞くだけではわからないし、情報を拾い集めてもわからない。血肉の入り混じった生きた経験が必要だ。なぜなら情報が有機的に結び付き、具体的に想起することが可能になるから。
イタリアンレザーでも数年前仕入れたALIZONAは欠点が多くてハマり切れなかった。高温多湿な日本の気候に馴染まないと思った。今はAMAZONIAが理想に近い。ロット毎の違いがかなりあって神経質になると厳しいけど、作り手的には潜在能力が引き出される素材。商品ありきだけど、皮革の良さで更に奥の扉が開く感じ。ALASKAも良いけど、加工しづらい。また、ロー引きフェイスの説得力は感じるけど、個人的にはAMAZONIAに軍配。でも、明らかに万能ではない。鞣されていても表面の質感が刻々と変わっていくので、出来上がった商品は早く出荷したい。
栃木レザーは素朴さと艶が魅力。盲信しているわけではない。試しにベリーで作った財布やブックカバーを使ってる内に、この革の良さを再認識した。即効性はないけど、じわじわ効く薬みたい。気付くと身体の調子が良くなっているような感じ。手肌と皮革の親和性を探りながら使っていくうちに好きになっていくし、表面の質感は維持しやすい。ただし、半裁の皮革を余すことなく使い続けるには、素材を生かす職人としての腕と経験値、何より商品ラインナップが必要になる。